おんころぐ

主に5大癌(胃大肺乳肝)に関する論文などを備忘録として。

【NSCLC】ケモが与えるPD–L1発現に与える影響

Impact of cytotoxic chemotherapy on PD-L1 expression in patients with non-small cell lung cancer negative for EGFR mutation and ALK fusion.

 
目的:免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、進行した非小細胞肺癌(NSCLC)の治療法として確立されました。ただし、細胞毒性化学療法がEGFRおよびALKのNSCLC野生型の免疫微小環境に影響を与えるかどうかは不明のままです。
 
方法:プログラムされた細胞死1リガンド1(PD-L1)発現、腫瘍突然変異負荷(TMB)、およびCD8 +腫瘍浸潤リンパ球(TIL)密度の変化を、術後のプラチナベースのアジュバント化学療法後の再発、または進行した段階で1つ以上の化学療法レジメン後に再生検を受けた人の再発。 PD-L1腫瘍比率スコア(TPS)およびCD8 + TIL密度は、免疫組織化学によって決定されました。 TMBは、がん遺伝子パネル(409遺伝子)を使用した次世代シーケンシングによって推定されました。
 
結果:EGFRおよびALKのNSCLC野生型患者17人が登録されました。 PD-L1 TPSは、最初の生検組織と比較して、再生検サンプルで増加する傾向がありましたが、この差は有意ではありませんでした(P = 0.113)。 7人の患者がPD-L1 TPSの増加を示し、この変化は4人で顕著でした。細胞毒性化学療法後にPD-L1 TPSが0から90%または0から95%に増加した2例も、ICIによるその後の治療に対して持続的な反応を示しました。 PD-L1 TPSとTMBの間の実質的な相関関係は、化学療法前(R = 0.112)または化学療法後(R = 0.101)のいずれにも明らかではありませんでした。化学療法前のPD-L1 TPSとCD8 + TIL密度の間に中程度の相関が検出され(R = 0.517)、その後は無視できる相関(R = 0.0219)でした。
 
結論:細胞毒性化学療法は、PD-L1発現レベルやTMBを含む腫瘍の生物学的特性を変える可能性があります。
 
 
まとめると
EGFR M(ー) のNSCLC17例
に対して
生検→プラチナベースChemo(1例はプラチナではない)→再生検
という順番で変化を検証
再生検後にPD–L1 TPSが増加傾向(P = 0.113で有意差はなし
であり
7/17でPD–L1が増加を示しその内の4人は特に増加した(10%→90%)
ということ
 
▶︎有意差はなかったものの、PD-L1発現が顕著に増加するというのは、少なからず免疫環境が変化していることが示唆されています。確固たるバイオマーカーがない中、免疫チェックポイント阻害剤の効果を上げるためにもICI単剤だけでなく、Chemoをシークエンスもしくは併用として使う意義が基礎の点からもありそうです。

【BC】HR(+)HER2(-)1st lineにおけるHT単独 vs 併用のメタアナ

Combined endocrine approaches vs endocrine therapy alone as first line treatment in elderly patients with hormone receptor-positive, HER2 negative, advanced breast cancer: to prescribe for the patient or the physician? A meta-analysis of phase II and III randomized clinical trials.

 
【どんな検証か?】
・65歳以上を対象とした1st line(PH2/3)のメタアナ報告です
・HT単独 vs 併用療法(CDK4/6阻害剤他)の有効性と安全性をまとめております
・CDK4/6阻害剤に関してはAEのみですが、65歳以上 vs 65未満でも検証しております
 
【結果は?】
・有効性:vs HT単独群に関してはCDK4/6阻害剤併用で有意に延長しており、その他の併用療法(FlU+ANAやLET+BEVやTEM+LET)では有意差はなかった
→既報の通り、高齢者においても1st lineからCDK4/6阻害剤の上乗せすることで有効性が期待できる
 
・安全性:CDK4/6阻害剤併用のAEにおける65歳未満 vs 60歳以上に関しては、
アベマシクリブは好中球減少症、白血球減少症、貧血、下痢の発生率を有意に増加させ、パルボシクリブは好中球減少症、白血球減少症、貧血、腰痛、無力症、感染症の発生率を有意に増加させました
※ABEはMONARCH3、でPALはPaloma1/TRIO-18, Paloma2 and Paloma3試験となります。
 
▶︎高齢者にはより注意が必要だが、特にコロナが流行している中ではILDに繋がりそうな免疫低下が怖いですね。
▶︎本研究では65歳をカットオフ値としているが、適切な高齢者ではないと思うので70歳以上での検証が欲しいところです。
 

【CRC】転移性結腸直腸癌の二次治療における血管新生阻害剤の選択

Selection of Second-line Anti-angiogenic Agents After Failure of Bevacizumab-containing First-line Chemotherapy in Metastatic Colorectal Cancer.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30149985

 
・ベバシズマブ、ラムシルマブ、ザルトラップ3つの血管新生阻害剤の使い分けのヒント
・現状で1次治療で化学療法+ベバシズマブ後の2次治療の選択レジメンについては直接比較もなく3剤の使い分けをどうするかという明確な指標はない
・薬価や使い慣れ等以外では、それぞれの試験の背景や作用機序の違いが使い分けの材料となる
・今回の解析では1st lineの治療成績(PFSの長さ)によって3剤それぞれの効果をレトロで比較した
 
HRだけで考えると1st lineのPFS別で
①3ヶ月未満
ラムシルマブ>アフリベルセプト>ベバシズマブ
②6ヶ月未満※
ラムシルマブ>ベバシズマブ≒アフリベルセプト 
③9ヶ月未満
ラムシルマブ>ベバシズマブ>アフリベルセプト 
④9ヶ月以上
ベバシズマブ=アフリベルセプト >ラムシルマブ
※6ヶ月未満のHRはラムシルマブだけ解析がでており、他2剤との比較は明確にはできない
 
・VEGF−Dを抑えるのはラムシルマブだけである
・ベバシズマブにとってVEGF−Dは予後不良因子であり、一方ラムシルマブは効果予測因子となる
・つまり、1st lineでの進行が早い=予後不良=VEGF−Dが高い=他剤は効きにくく、ラムシルマブは効きやすい
・VEGF−Dが実臨床で測定可能になるまでは、1st lineの進行度合を仮想マーカーとして用いる可能性も示唆される
・実際に1st lineのPFSはTREE試験で中央値9ヶ月なので、HRだけで考えると半数でラムシルマブが良いのか。

▶︎バイオマーカーが確立してない現状では、1st lineが9ヶ月未満であればラムシルマブが良さそうですね。 

【NSCLC】REVEL試験における前治療レジメン別解析

Exploratory analysis of front-line therapies in REVEL: a randomised phase 3 study of ramucirumab plus docetaxel versus docetaxel for the treatment of stage IV non-small-cell lung cancer after disease progression on platinum-based therapy.

 
・REVEL試験(ドセタキル+ラムシルマブの2nd試験)のレトロ解析
・1st lineのレジメン別に効果等を検証
・前治療レジメン別解析として、1st lineでのレジメン (ALM/PTXorDTX/GEM/BEV)それぞれの有無に関係なくRAM+DTX群が良好であった
・特に前治療がタキサン系であってもRAM+DTXで良好な結果を得られたことや、前治療がタキサン系とタキサン系以外を比較してもHRが変わらなかったのは臨床的な利点である
・前治療にBEVありでもなしでもRAM+DTXで良好な結果であった、(前治療にBEVあり群のRAM+DTX vs DTXのORRに関しては同等であった)
・レトロのサブ解析なので解釈には注意が必要
・前治療に関係なくRAM+DTXは良好な結果が示されたので、ICI+Chemoの後も期待できるかもしれない
▶︎KEYNOTE189だけでなく、IMPOWER150、IMPOWER130レジメンの後にもドセタキセル+ラムシルマブ併用療法が期待できそうですね。